04_現場録音
現場セリフ録音
1.現場録音とは
海外ではProduction Soundと呼ばれているが、日本の映画撮影の現場では、撮影時に同時に録音するので「同時録音」又は映像と同期して録音する事から「シンクロ」と呼ばれている
スタッフは録音技師と数名の助手で行われる
撮影現場では、周りの音や撮影フレーム、照明などの制約から、録音する環境は必ずしも良いとは言えない。しかし映像に合った臨場感のある音を録音することができる
主に、ガンマイクと言われる指向性の強いマイクを、アルミやカーボン製のポールにつけて役者の動きに合わせマイクを振りながらな台詞を録音する
小型のマイクを役者に装着し、電波で飛ばして録音することもある
機材はバッテリー駆動のフィールドミキサーやフィールドレコーダーが使われる
2.現場録音で気を付けること
言語として台詞が分かるか
感情が伝わってくるか
映像に合った音になっているか
音のつながりやダブりなど編集上問題ないか
音楽や効果音がミックスされた仕上がりの事も考える
3.録音シートに記入するもの
シーンやカット、テイクのナンバー
そのテイクが「OK」「NG」又は「keep」なのかを書く
レコーダーのファイル名を書く
ファイル名は日付を設定して撮影順にナンバーが増えていく方法をとっていることが多い
このシートをもとにファイル名をカットナンバーにリネームする
「NOTES」には「マイクが風に吹かれている」とかNGの理由を記入する
NGテイクでも部分的に良いところがある場合は、後ではめ変えたりすることがあるのでメモをしておく
下記の録音シートの数字の「1」「2」「3」「4」はレコーダーのトラックで「G1(ガンマイク1)」や「W1(ワイヤレスマイク1)などマイクの種類を書いたり、録音した台詞の役名を書いたりする
編集部はこのシートを元に画と音を合わせるので撮影終了後、記録シートと齟齬が無いか確認する
録音のスタッフと役割
スタッフの仕事は録音技師の方針や、作品の規模などよって仕事の内容が変わりますが、一般的と思われる内容を書きました。
ミキサー
ミキサーとレコーダーを操作し、音を録音する
録音した音の良し悪しを判断する
マイクの面が合っているか、ワイヤレスマイクのガサ(衣擦れノイズ)が無いか、場面に合わないノイズが無いか、よく聞いて判断する
録音シートを書く
チーフ助手
録音できる環境を整えるのが仕事
現場に到着したらその現場の状況を把握し、録音の妨げになるものを排除する
撮影時にはカメラ近くにからブームマンにマイクの位置を指示したり、現場の状況を録音技師に伝える
ワイヤレスマイクを担当する
セカンド助手
メインのブームマイクを担当
サード助手
機材の管理を担当
二本目のブームマイクを振ることもある
自分が担当するマイクが無い時はケーブルさばきをする
現場でのマイクアレンジ
ガンマイク
ガンマイクは指向性が強く周りの音を低減することができる為、台詞の録音に使われる。理想的なポジションは図のように台詞を喋っている人の斜め上からマイクの正面を口元に狙った位置である。指向性は45°ぐらいなので、その範囲から外れると音が小さくなり、同時に高音も下がっていくので、「ぼけた音」になっていく。ガンマイクはフレームに入らないところで、マイクの「面」を口元に合わせることが重要である。
複数での会話は距離が近い時は真ん中に置いても構わないが、距離が離れていたり口元がマイクの面から外れてしまう場合は台詞ごとにマイクを振る。台詞の掛け合いが早い場合は、台詞の語尾でマイクを振り始め、次の台詞の頭が欠けないようにする。台詞の頭がボケると目立つことになる。
マイクを二本以上使う場合は、逆位相成分や遠い音が入って音質が低下したり、ベースノイズが大きくなってしまうので、必要のないマイクは台詞ごとに絞る。(マルチトラック録音の時はそのままで良いが、編集用の現場ミックスを作る場合は必要の無いマイクは絞る)
ワイヤレスマイク
マイクは胸元やシャツの襟の中に隠す。女性の場合はブラジャーに付ける事もある
耳や髪の毛の中に仕込むこともある
送信機はベルトに付けたり、ポケットの中に入れる。体につける場合はランニング用のウエストポーチを使う。ワンピースなど腰回りがぴったりしている洋服は送信機を付けているのがわかってしまう場合は太ももにつけることもある。
仕込みマイク
ブームマイクが届かない場合や、物陰にマイクを隠した方が良い音が録れる時は仕込みマイクを使う
小型のマイクスタンド使ったり、物にマイクを固定する
ガンマイクだけでなく、ラベリアマイクや小型の単一指向性のマイクを使うこともある
マルチトラックレコーダーでの現場録音
ステレオのフィールドレコーダーで2本以上のマイクを使う場合は現場でミックスしていたが、マルチトラックレコーダーが使われるようになってから、ミックスをする前の個別のマイクの音を録音できるようになった。
トラック数が多いと編集作業がやりづらいので、編集部用に2トラックの音を作る必要がある。
フィールドマルチトラックレコーダーにはマルチトラックとは別にステレオトラックがあるタイプがある。その場合プリフェーダーである程度のボリームを決めたらポストフェーダーを使ってステレオミックスを作成する。
外部のミキサーを使う場合は別の2chフィールドレコーダーを使う。マルチレコーダー側に余裕があればミックスした2トラックを録音しておくと同じタイムコード のファイルが作成され、Protoolsで編集する時にマルチトラックの音が同じ場所に貼り付けられる。
プレイバック撮影
映画の撮影で、バンドの演奏や歌のシーン等は、カットを割って撮影する場合、同時に音楽を録音する事は出来ません。またワンカットで撮影する時でもマイクが写ってはいけない場合はマイクポジションに制約が出来てしまう為、事前に録音した音楽を撮影現場で再生し、その音楽に合わせて撮影します。この撮影方法をプレイバック撮影と言います。
プレイバック用の音楽は撮影前に録音しておく必要がある。
演奏が始めやすいように音楽の頭にはカウントを入れておく。
音楽を途中から再生するので、波形が見える機材で再生した方がやりやすい。
編集で映像と合わせるガイドとして、現場でもカチンコの音を入れた音楽を録音する。
現場効果音の録音
現場では台詞を中心に録音します。しかし、同時にバックノイズも入ってします。カットとカットをつないだ時にバックノイズに段差が出来てしまうことがあるので、その段差を埋める為にも撮影現場のバックノイズを録音しておく必要がある。
海や川などの自然の音は地形によって異なり、現場で録音した音がの方が映像に合うので、撮影現場の様々な自然の音を録音する。
車やバイク、特殊なドアの音なども効果音ライイブラリーにあるとは限らないので現場で録音する。
居酒屋や喫茶店のシーンではセリフと一緒にガヤを録音してしまうと音がつながらないで、エキストラの人には声を出さずにお芝居をしてもらい、撮影後にガヤを録音する。この時、全体的にマイクの面を外すか、特定の人の声が目立たないようにマイクを動かしながら録音する。